日本酒の選び方って、難しいと思いませんか?
ふつうの居酒屋だと1種類しか日本酒を置いていなかったり、逆に日本酒メニューが多いところだと、どれを選んでいいか、さっぱりわからない。
それで結局「おすすめください」と言って、出されたものをなんとなく飲んでしまう。
でも、せっかくなら自分好みのおいしい味に出会いたいですよね。
今回は、そんなあなたの「日本酒迷子」を解決します!
日本酒って、メニューを見ると同じ名前なのに「純米酒」とか「吟醸」とかいろいろ種類があって、違いがよくわかりません。
そこで今回は、同一の酒蔵(さかぐら)が作っている、日本酒10種を飲み比べ!
メニューでよく見かける日本酒用語の解説とともに、私が実際に飲んで感じた味の違いも紹介します。
さらに、お酒を作っている蔵元(くらもと)さんに、お話を聞くこともできました。
これを読めば、今までなんとなく飲んでいた日本酒の味の違いが、詳しくわかるようになりますよ!
目次
日本酒が好きすぎて、蔵元に嫁いだ女将さんの話
今回お邪魔したのは、高知の日本酒「文佳人(ぶんかじん)」の飲み比べイベント。
蔵元は、明治10年創業のアリサワ酒造さん。
実はアリサワ酒造の女将、あやさんは、もともとお酒造りとは全然関係ない仕事をしていました。
それが今では、アリサワ酒造の看板女将として、全国のイベントを飛び回っています。
さらに、2017年にはフランスの日本酒コンクールの純米部門で「文佳人」が上位5本に選ばれ、パリで表彰もされたんですよ!
(参考:「文佳人 純米酒」が仏の日本酒コンクール入賞 高知県香美市|高知新聞)
きっかけは何だったのか、お話を聞いてみました。
私は日本酒が好きだったので、日本酒居酒屋へ行ったときに「店長おすすめのお酒」として出してもらったのがきっかけです。
文佳人が出る日本酒イベントに行ったり、酒蔵に行ったり、「日本酒のおっかけ」をしていたんです。
でも少しずつ日本酒のイベントに出ていくうちに、「おいしいお酒をもっと広めたい」と思うようになって
やっぱり、文佳人のことを好きな自分が売るのが、一番いいなと思って。
日本酒を作るとき、もととなる醪(もろみ)を絞って液体と固体にわけるんですが、圧搾機で一気にギュッとしぼるのではなく、優しく押し出すようにしぼっています。
しかしこの「槽搾り」をすることで、日本酒本来の味わいが楽しめるんです。
他にも、ふつうはお酒をびん詰めする前に高温で殺菌するのですが、うちでは日本酒の風味を閉じ込めるため、びん詰めしてからお湯につけて徐々に熱を通す方法をとっています。
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日本酒10種を飲み比べ!
今回飲み比べたのは、こちらの✩印がついている10種。
日本酒をあまり飲まない人は、メニューを見ても「???」という感じだと思います。
そこで今から、私が実際に飲んだ味の感想と、各メニューに書かれている用語の説明をしていきます!
用語はできる限りわかりやすくお伝えしますので、気になる単語があったらチェックしてみてくださいね。
1.文佳人 純米酒 28BY
純米酒:原料にお米と米こうじのみを使っている日本酒。純米酒の表記がない日本酒には、醸造アルコールが加えられていることが多い。一般的に、純米酒はお米の味がしっかりと出やすく、醸造アルコールを加えた日本酒は、香りの良いスッキリとした味になる。
数ある文佳人の中でも代表選手なのが、こちらの「文佳人 純米酒」。
純米酒としてお米の旨みもしっかり感じられつつ、後味がスッキリしており、非常にバランスのとれた味わいです。
さきほどお伝えした、フランスの日本酒コンクールの純米部門で、上位5位に選ばれたのが、この純米酒。
「お酒は好きだけど、まだおいしい日本酒には出会ったことがない」という人に超おすすめしたい1本です。
2.文佳人 リズール 純米吟醸 28BY
吟醸酒(ぎんじょうしゅ):精米歩合が60%以下で、低温でゆっくり発酵させた日本酒。精米歩合60%とは、原料となるお米の表面を40%以上削った状態。お米を削るほど、すっきりした味が際立つようになる。吟醸香と呼ばれる、華やかな香りを持つお酒も多い。ちなみに、お米を50%以上削ったものを、大吟醸と呼ぶ。
「リズール 純米吟醸」は、吟醸酒らしいスッキリとドライな口当たりながら、お米の味もほのかに感じられるお酒です。
実は私は辛口のお酒が苦手なんですが、こちらの純米吟醸はスッキリ爽やかな上にお米の旨みがあり、おいしかったです。
3.文佳人 リズール 特別純米 28BY
特別純米酒:吟醸酒と同じく精米歩合が60%以下、または特別な製造方法を行い、それをラベルに明記している純米酒のこと。「特別な製造方法」が何かは、酒蔵によってこだわりが異なる。純米吟醸と精米歩合は同じでも、よりお米の旨みを強調したい場合に特別純米とつけることがある。
華やかな香りが特徴の純米酒。
飲むとフルーティな甘みが口の中に広がります。
甘いと言ってもベタっとした感じはなく、さらりとまるで白ワインのように飲めるので、いろんな食事と合わせることができます。
4.鏡野 純米 無濾過生原酒 28BY
無濾過生原酒:いわば「しぼりたての日本酒」で、旨みたっぷりの日本酒本来の味が楽しめる。「無濾過生原酒」の意味は、1.お米の雑味をとる濾過作業をしておらず(無濾過)、2.酵素の動きを止める加熱処理をせず(生)、3.味のバランスを整える加水処理もしていない(原酒)お酒のこと。そのぶん味が濃く、アルコール度数も高め(鏡野は17~18度)のものが多い。
爽やかな香りで、飲むと果実のようにフレッシュな甘味を感じるお酒です。
後味はスッキリしており、口の中に甘味が残らないので、食事にも合わせやすくスイスイ飲めます。
5.鏡野 おりがらみ
おりがらみ:日本酒をしぼる時に出る、小さなしぼりかす(おり)を、そのままびん詰めしたお酒。おりから出る風味を生かすため、加熱処理しない生酒が多い。生酒は瓶の中でも発酵が進むため、微発泡のシュワっとしたお酒になる。
おりがらみとは、簡単にいうと「うすいにごり酒」。
色は真っ白ではないんですが、よく見ると少し白みがかっています。
こちらの「鏡野 おりがらみ」は、微発泡でスッキリした味わいの中に、にごり酒ならではのまろやかさがあります。
よく冷やして、1杯目に飲みたいお酒です。
6.文佳人 夏純吟 うすにごり
おばけのラベルがかわいい、夏限定の純米吟醸酒。
さきほどの「鏡野 おりがらみ」と同じく薄いにごり酒で、夏限定にふさわしく、フレッシュでドライな、冷やして飲むのにオススメのタイプです。
7.文佳人 純米 秋あがり
「秋あがり」と「ひやおろし」の違い:冬に作ったお酒を、夏に熟成させたものを「秋あがり」と呼んだり「ひやおろし」と呼んだりする。夏の終わりから、11月頃まで飲むことができる限定酒。「秋あがり」は、夏を越したお酒に旨みがのった状態をいい、「ひやおろし」は、秋あがりのお酒をおろす(出荷する)ことを指す。出荷前に通常おこなう加熱処理をしないため、「冷や」のまま「おろす」ことから「ひやおろし」と呼ばれている。
こちらは秋限定の純米酒。
秋あがりとは、冬に作った日本酒を夏のあいだ寝かせて熟成し、旨みがのったお酒のことです。
フレッシュな生酒とは反対に、コクのある風味が特徴。
「文佳人 純米 秋あがり」は、まろやかな口当たりと、あと味のキレのよさが絶妙なバランスで、ひっかかることなくスイスイ飲めます。
8.文佳人 純米吟醸 28BY 雄町
「雄町(おまち)」とは、お酒の原料となるお米の種類の名前です。
雄町は力強いお米なので、お酒もしっかりしたコクのある味わいとなります。
こちらの「文佳人 純米吟醸 28BY 雄町」も、濃厚なお米の甘みを感じます。
お酒を主役に楽しみたいときにピッタリです!
9.文佳人 リズール 特別純米 27BY
BY:BYとは、「Brewery Year(醸造年)」を略したもので、日本酒が作られた年を表します。ちなみに「ビー・ワイ」と読みます。28BYの場合、少しややこしいですが、平成28年の7月から平成29年6月の間に作られたお酒、ということになります。
この「文佳人 リズール 特別純米 27BY」は、さきほど紹介した「文佳人 リズール 特別純米 28BY」より1年長く熟成されています。
熟成したことで、よりお米のうまみを感じる、コクのある味わいになっています。
10.文佳人 純米酒 25BY
最初に紹介した「文佳人 純米酒 28BY」の、3年熟成タイプ。
スッキリした飲み口だったのが、3年寝かせたことでまろやかになり、甘みも出ています。
お米の味がはっきり感じられ、このお酒だけで主役になれる貫禄があります。
今回の飲み比べに合わせたお料理がこちら
文佳人の飲み比べが行われたのは、大阪・梅田の「だんらん家」さん。
日本酒と、お酒に合うおいしい料理が味わえるお店です。
今回、文佳人と一緒にいただいた「肴セット」がこちらです!
いわしの有馬煮(サンショウの実と一緒に煮たもの)やカツオなど、味のしっかりしたメニューから、汲み上げ湯葉にきゅうりのぬか漬けといったあっさりしたものまで。
スッキリとした吟醸酒に、濃い味つけの魚を合わせるもよし、濃厚な熟成酒を軽いつまみとともに楽しむのもよし。
今まで、和食に合わせるお酒に悩んでいた人は、ぜひ日本酒を試してみてくださいね。
寒い季節におすすめ!熱燗の頼み方
日本酒は、世界でも珍しい「冷やしても温めても、おいしく飲めるお酒」です。
寒い季節は、ぜひ熱燗にもトライしてください。
私が思う、熱燗に合う日本酒の特徴は、次の2つです。
- 香りが華やかすぎないお酒
- 純米酒や熟成酒など、味がしっかりしたお酒
例えば、コーヒーや紅茶を飲むとき、アイスよりもホットのほうが、より香りが強く味が濃厚に感じられると思います。
日本酒も同じで、もともと香りが華やかなタイプを温めると、香りが立ちすぎて料理と合わせにくくなることがあります。
また、吟醸酒を温めると、せっかくの香りが飛んでしまうことも。
しかしもちろん、温めることで、より旨みが花開き、おいしくなるお酒もあります。
私は、濃い味わいのお酒が好きなので、しっかりした熟成酒を、ぬるめに温めて飲むのがお気に入り。
熱燗にチャレンジするときは、お店の人に「熱燗でおいしいお酒はどれですか?」と聞いてみてください。
家で飲むなら、とっくりよりも、どんぶり型のお皿に入れて電子レンジで温めるのが簡単ですよ。
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まとめ
日本酒を選ぶときの目安について、最後にまとめます。
- 純米酒はお米の旨みが出やすく、それ以外はスッキリめのお酒が多い。
- 吟醸酒は、お米を多めに削ることで、スッキリとドライな飲み口になっており、香りも華やか。
- 「うすにごり」「おりがらみ」は少し白みがかっていて、冷やして夏に飲むとおいしい。
- 「秋上がり」「ひやおろし」は夏に熟成させた秋限定のお酒で、コクがある。
- 同じ銘柄のお酒でも、お米の種類、作られた年数(BY)によって味が変わる。
- 熱燗で飲むなら、香りが華やかすぎない、味がしっかりめのお酒がおすすめ。
日本酒は「地酒」とも呼ばれるように、日本中で作られており、その土地ごとにおいしいお酒があります。
旅行先の居酒屋で、おすすめの日本酒を聞いて飲むのも、楽しいですよ。
私も寒い季節は熱燗、暑い季節はにごり酒に冷酒と、1年中、日本酒を楽しんでします。
あなたのお気に入りを、見つけてくださいね!
(取材協力:アリサワ酒造 個室ダイニング 魚料理 だんらん家 大阪梅田店)
先日初めて文佳人を呑みました。
味の面で、高知県にあの名門・酔鯨をも上回る蔵があったとは中々驚きでしたが。
酒類は吟の夢です。
個人的には雄町よりこちらの方が好きですねぇ……
記事の中で雄町の特徴を非常に上手く表現されてますが、あの特徴が苦手で(笑)
火入れでここまで旨いのだから、生酒はどれほど優れているのか。
※個人的に『同じ作り方をした酒』なら無条件に生酒の方が旨く感じます。